1.レーザの特徴
  レーザと普通の光を比較して、レーザの特徴を簡単にお話しします。
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1-1.単色性
 
太陽光をプリズムに通すと7色の光に分解される。これは、太陽光が様々な波長の光が混ざり合ったものであるからである。一方、レーザは単一波長の光の集まりなので、分解されることがない。この特徴を単色性と呼んでいる。

太陽光
レーザ光
単色性



1-2.指向性
 ランプなどの通常の光源はあらゆる方向に分散するのに対して、レーザは直進しほとんど広がらない。このことを指向性が良いという。
懐中電灯の光
レーザ光
指向性



1-3.エネルギー密度
 太陽光をレンズを用いて光を収斂させるとする。太陽光はいろいろな波長から成り、平行光でないため鋭く焦点に集めることができい。しかし、レーザは普通の光と異なって、位相がよく揃い収束性もよいので、狭い面積にきわめて高密度の光エネルギーを集中でき、焦点温度を数万度まで上げることができる。
太陽光
レーザ光
エネルギー密度



1-4.コヒーレント
 コヒーレントな光とは一つの定まった波長をもつ光で、連続的に続いていて光の山と山、谷と谷が一致する規則正しい光のことである。レーザの光はこのコヒーレント性をもっているが、自然光はこのような性質は持っていないのでインコヒーレントな光と呼ばれている。
自然光(インコヒーレント)
レーザ光(コヒーレント)
コヒーレント性

 

2.レーザの発振原理
 LaserLight Amplification by Stimulated Emission of Radiationの頭文字をとって作られた単語で、誘導放出による光増幅のことで、一般には「レーザ発振器」を意味する。以下にレーザの発振過程を簡単に説明します。



2-1.基底状態
 すべての物質は、原子と呼ばれる小さな粒子で構成されている。原子は中心に原子核を持ち、その周りにいくつかの電子が取り巻いている。図のような、原子が持つ量子力学的な系の定常状態のうち、最低エネルギーでもっとも安定した状態のことを基底状態という。
基底状態



2-2.励起(ポンピング)
 上図の基底状態にある原子に光や電子などのエネルギを与えると電子が、より外側の軌道に移り、基底状態より高いエネルギー状態となる。このことを「原子がエネルギーを得て励起(ポンピング)され、励起状態になる」という。
励起状態



2-3.自然放出
 励起された原子は不安定なので、すぐに元の軌道に戻ろうとする。このときにエネルギーを光として放出する。この光の波長は原子の励起準位(軌道からどれだけ離れたか)による。このときに、基底状態のエネルギー準位をE1、励起状態のエネルギー準位をE2とすると、光の粒子の(光子、photon)のエネルギーは、
 E2-E1=hν
となる。

自然放出
自然放出のエネルギー準位



2-4.誘導放出
 この自然放出光が他の励起状態にある原子に入射すると、その原子は自然放出光に刺激されて基底状態に戻る。このときに発生する光を誘導放出光といい、入射光と同じ向きにエネルギーが2倍になるように増幅される。
誘導放出



2-5.光増幅
 励起エネルギを強くすると、励起状態の原子数が基底状態のそれより多くなる。この状態のことを通常の熱平衡状態では成立しないことから「反転分布」という。この状態でレーザの媒質中を自然放出光が進むと、誘導放出過程により光の増幅が行われる。この増幅光が二枚の反射鏡から形成される光共振器の間を往復するとさらに誘導放出による光の増幅が行われる。この増加エネルギが光共振器内の損出エネルギを越えるとレーザ発振が起こってレーザ光が放出される。
熱平衡状態
反転分布
レーザ発振器の構造とレーザ発振の仕組み
準位による存在比


以上で、レーザ基礎講座はおしまいです。